溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「どこを見たらそういう見解になるんだ」
すっかり怯える私の前でため息をつきながら九条さんがそう言った。
「え? 違うんですか?」
「さっさとやってしまおう。日が暮れる」
九条さんの言葉に改めて彼を見上げると、九条さんは頭にタオルを巻き、長靴姿だった。しかも持参してきたであろうスコップで、豪快に泥を掻き出し始めた。
……嘘、もしかして手伝いに来てくれたの?
「あの、ありがとうございます!」
そう声を張り上げる私に、九条さんはチラリと視線をよこすと小さく鼻を鳴らした。隅の方ではおばちゃんがクスクスと笑っていた。