溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「西沢、いつまでさぼってんだ」

相変わらずの怒鳴り声飛んできて、ひっ!っと肩が竦む。

「た、ただちにやります! その前に着替えを……」

尻つぼみになりながらそう返事をすると、ユリさんにじゃまた後で、と言って慌てて仮眠室に向かう。
その間もあの恐ろしい目で私を観察して、背筋が凍りそうになる。

オフィスに入ると途端に鬼。でもあの時九条さんが来てくれなければ、きっと無力な自分に心底がっかりして、後悔ばかりしていたと思う。扉を開けて入ってきた瞬間、私には九条さんがヒーローに見えた。

「さっさとしろ、西沢―!」
「は、はいぃぃー!」
「リリースに間に合わなかったら吊るすからな!」
「ひゃー! ごめんなさいー!!」

西沢青葉、今夜も鬼の餌食になりそうです。

< 53 / 291 >

この作品をシェア

pagetop