溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「どうしたんですか? ユリさん」
「それはこっちの台詞よ。朝からボーっとしてどうしちゃったの?」
追いついたユリさんが私の肩に手を置きながら心配げに覗き込む。
「べ、別にどうもしていませんよ。いつも通りです」
さすがに本当のことも言えず、無理やり笑顔を貼り付けそう誤魔化す。
「嘘ね」
だがユリさんは鋭かった。
「九条さんとなんかあったんでしょ」
ズバッと直球を投げてくる。その剛速球に見事にデッドボールのごとくあたってしまい、
「なっ、えっ!? どうしてそれを! もしかして九条さんになにか聞きました?」
テンパりながらそう叫んでしまった。