溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「どうって、なにがですか?」
「セックスよ。九条さん上手だった? って聞いてるの」
「だ、だから、覚えてないんですって! それにしたかどうか定かじゃないんです!」
ていうか、こんな昼間にそんな破廉恥な用語出さないでよー!それでなくても私には前科があるのに!
「私が聞いてあげようか? 西沢とセックスしたのかって」
「やだー! やめてください! ていうか、その用語連呼しないでくださいよー!」
「え? ダメなの? セックスってちゃんと辞書にも載ってるじゃない」
「もう、ユリさんてば!」
この人、確信犯!この前のことを知ってるからわざと言ってるんだな!
「私は真剣に悩んでるんです! もういいです!」
顔を真っ赤にしながらそう嘆いてテーブルに突っ伏すと、ユリさんが嘘嘘、ごめんと頭を撫でた。
「もうあんたってホントいい反応するから可愛いくてたまんないのよね〜」
「うぅ〜、ユリさんの意地悪」
ユリさんを見上げ、グスンと鼻をすする。
「子犬みたい。食べちゃいたい」
「もう、それ冗談になりませんから」
「そうだった」
ケラケラと、綺麗に並んだ歯をむき出し豪快に笑うユリさん。やっぱりおもしろがってる。
だけどついさっきまでうだうだと悩んでいたのに、そんなユリさんを見ているといつの間に吹っ切れていた。