溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「なんか、ユリさんに話したらちょっとスッキリしました」
「あら、そう?」
「やっぱりなんだかんだユリさん大好きです」
「なによ、そのなんだかんだって……って、うわ、ちょっ、ちょっと西沢」
張りつめていたものが切れたのか、つい甘えたくなってユリさんの豊満な胸にゴロゴロと猫のようにすり寄る。
友達と呼ぶには厚かましいかもしれない。でも今の私には唯一信頼できて、心を許せる人。綺麗なのに気取ってなくて気さくで、何でも話せて。お姉さんみたいな存在のユリさんがいてくれてよかった。
「よしよし。可愛い奴め」
何度か引き離そうとしていたが、しつこい私に観念したのか、ユリさんは大きな手でくしゃくしゃと髪を撫でる。
「なんだかちょっと妬けるなー」
ボソッと聞こえてきたその声にえ?と顔をあげると、複雑な笑みを浮かべるユリさんの顔があった。それってどういう……。もしかして、九条さんのこと……?
「あら、いらっしゃい」
おばちゃんの声が店内に響き、二人で同時にその声が向けられた方に視線を向けると、そこにはこっちに向かってくる九条さんの姿があった。
「ゲッ」
「噂をすれば」
しかも当たり前のように隣に座ってくるっていう。