隣人はヒモである【完】




「クズだなって思った?」

「少し」

「なんでこんな怪しい男、家に入れた?」

「……そっちこそどうして黙ってついてきたの?」

「……」

「あたしに興味があったからじゃないの?」

「……」

「違う? でもあたしはそう。あなたに興味があった」




この人はどんな人なんだろう。


あの地味な女の命を救うけどそれと同時に、反対に、奪う紐でもある。


細長くて、どんな形にもなれる紐。


いつぷっつりと切れてしまうかも分からない危なっかしい命綱。


その匙加減ひとつで女の細首の一つや二つ、簡単に絞め殺してしまう首吊りロープ。


だってこの人の行動次第で、きっとあの女の人は死ぬ。




「……きみは、ちょっと変だね」




ちょっとの間驚いた表情を浮かべて、その後くつくつと喉の奥底で笑ったレオさんが、立ち上がることなく膝をついたまま、すり寄るようにしてあたしとの距離を詰めた。


身体のどこも触れちゃいなかったけど、全身がじんじん熱くなる感じがして、強烈に惹かれる。


どうにも我慢できなくなって、思わず手を伸ばし、彼の長い前髪をそっとかき分けた。


至近距離でやっと初めて目が合って、その黒い瞳の中に映った自分の姿は知らない人みたいに見えた。きれいだった。


意外にもぱっちりした二重で、あまり気にしていなかったけど肌がキレイ。


鼻がすっと通っていて、清潔感はないけど、割と整った顔立ちだと思う。


そりゃあイケメンとはいえないけど、なんだか強烈に印象に残る、魅力のある目。なんで前髪伸ばしてたんだろう、もったいない。


やっぱりあたしは、目をそらすことが出来なかった。




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