隣人はヒモである【完】
「……あなたは、ちょっと童顔だね」
「だから言ったじゃん」
「うん」
ドキドキする。
——たとえば今、あたしがこの男にキスしたらどうなるだろう。
それがあの彼女にバレたらどうなるだろう。
あの人は死んでしまうだろうか。この男に依存したあの女は。
ドキドキする。
前に秋元さんがうちに押しかけてきた日、あたしは少なからず彼女に同情し、助けてあげたいとさえ思っていたのに、今は全然別なことを考えている。酷いことばかりを考えている。
ドキドキする。
「はい、おわり」
彼の前髪をどけていた手をはがされ、また黒い瞳には前髪のカーテンが下りた。
あーあ。絶対髪短い方がいいのに。
だけど外されたあたしの手は未だ握られたまま、二人の距離は近いまま。