隣人はヒモである【完】




「悪趣味」



ドン引きだよ、と付け加えた芙美は、顔を引きつらせてあたしを見る。


1講が終わり、2講は空きのため、少し早めの昼食を取ろうと食堂に向かう途中、思い切って隣人について打ち明けたところ、友人のこの反応である。


多分芙美の反応が世間的に正解だとあたしも思う。


軽率に話してしまったことを、少しだけ後悔した。



「ていうか気持ち悪くない? 毎晩毎晩? よく平気でいられるね、やだ、想像するだけで気持ち悪いわー」



性行為に対して強い抵抗があるらしい芙美は、嫌悪感を隠すことなく前面に押し出して否定する。


確かに。と、あっさりその意見を受け入れてしまえるくらいの普通の感覚は、あたしも持ち合わせている。


毎晩毎晩夜遅くまで。他人の喘ぎ声。確かに。そりゃ気持ち悪いよね。



「でも意外と面白いんだよ」

「面白いって……」

「そりゃあ最初はあたしだってびっくりしたけどさー、慣れたらまあまあ聞いてられるもんだよ」

「なに、気が狂った結果なの?」



納得しつつも非難めいた視線をあたしに投げかけることは決してやめない芙美。そんな風に言わなくたって、と、反論するのは面倒なのでやめておいた。


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