隣人はヒモである【完】
「そんなに怒んなよ、もし君が、あの女の仕掛けたハニートラップだったらどうしようかなって怖くなった、ちょっとした出来心だから」
「……あの人って? 秋元さん? そんなわけないじゃん」
「そうだね、少なくとも、そのスマホにはあの人の痕跡はなかったね」
「……捨てられるから? あたしのとこにいるの、ばれたら?」
「まあそんなとこ」
伊達にヒモやってるわけじゃないって?
この男はあの人の部屋の中に、心の中に、体の中に、じわじわと根を広げて寄生する、嫌な虫。
秋元さんを蝕んで、いつかポイってして捨ててずたずたに殺してしまうんじゃないだろうか。精神的に。
ていうか、あたしのところにいるのがばれたって、絶対に捨てられないように、洗脳してそうだけどこの男なら。あの女ならされてそうだし。
あの人に捨てられたって、きっとこの男はひとつも困らないだろう。
そこまで疑う必要はないのに。あたしのこと。ちょっと違和感。そんな神経質になる? あたしのスマホ盗み見るほど。