隣人はヒモである【完】




「ていうか、別に隣人の情事を話したいわけじゃなくて。なんか二人の関係性? 気になるっていうか、彼女のほうが。可哀そうって思って」

「可哀そう?」

「だってうちみたいな狭いアパートに住んでるってことはそんなにお金持ってないんだよ、あの人。絶対ヒモ養えるほど稼げてないと思う」

「ふうん」

「男のほうも気味が悪いけど、彼女のほうはもっと変なの。死んじゃいそうな感じで。もともとの顔つきが幸薄そうではあるんだけど。あんなクズみたいな男といて、どんどん不幸になってるんじゃないかと思って」

「……前から思ってたけどさあ、穂波って、ちょっと変わってるよね」



どうしてあの二人は一緒にいるんだろう、と。毎晩考える。


だけど芙美は逆に、そんな風に考えているあたしの方がよっぽど不思議だという。


ベッドに横になって、狂ったように男の名前を呼ぶ彼女は、何が幸せであの男にお金をかけてしまうんだろう。


あたしを変わってる、と言った芙美の言葉に嫌な感じはしなかったけれど、特に返す言葉も思い浮かばなかったので聞かなかったことにする。



「……でもどうかな? その女の人、地味で冴えない感じの人なんでしょ? お金をかけてでも、誰か男と一緒に居たいんじゃないの? モテないから。自分に言い寄ってくる男には弱いんだよ。ヒモ飼っちゃう人の典型なんじゃん?」



続けて、訳知り顔で話す芙美に多少の違和感を覚えつつ、そうなのかもねーと適当に相槌を打った。



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