隣人はヒモである【完】
あたしのほうから話題を振っておいてなんだけど、芙美に相談してみたって、あたしが望んだような共感を得られないことを悟った。
芙美は彼女をヒモ飼いの典型だというけれど、あたしにはよく分からない。
そうじゃない。
あの男だ。あの男が彼女をそうさせたんじゃないかと思う。
あの女の人だって、生まれたときからヒモを飼っていたわけがないじゃない。
あの人がそうさせたんだ。
どうしてそう思うのか、どこがどう具体的に、と聞かれれば言えないけれど、なんかそう思う。
あの二人が一緒にいることに、強烈に違和を感じてしまう。
ふと、朝見たヒモ男の黒い目を、唐突に思い出して少しどきりとした。
あたしはあの目から、目をそらすことができなかった。