隣人はヒモである【完】
「……穂波って、何を考えてるのか分からない」
「……るいくんは、あたしのどこが好きなの」
「ほかの人と違うところ」
「……え?」
「物事をいつも他の人とは違うところから見てるじゃん。高校のころから、他の同級生より高い位置にいて、こっちを傍観してる」
「……どういう意味?」
「穂波みたいな人って全然いない、しっかり自分を持ってて誰にも媚びない、誰とも似てない、唯一無二の女の子だと思ってたよ」
るいくんが語っているのは、本当にあたしのことだろうか。
いやに冷静に、るいくんが言ったあたしの好きなところを分析してしまう。
あたしは、あたしが特別な人間じゃないことくらい誰より知っているのに。
勉強も運動も容姿も音楽や絵の才能だって特段秀でているところはない。
彼はどうやらあたしの内面、性格のことを言っているらしかったが、それこそ思い違いをしているようだ。
あたしほど空っぽな人間っていないと思う。
きっと、しっかり自分を持っていて誰にも媚びない人間は、高校の同級生とやったりしないはず。
それも、あたしみたいに、なんとなく、場の雰囲気で流されたとか、暇つぶしとかでやっている人間はなおさら当てはまらない。