隣人はヒモである【完】
「……それで、話って?」
「ああ、……はい、あの、……お願いがあって」
「あたしにですか?」
「……とらないでほしいんです」
小さな声。
伏せられた彼女の目を何気なく見やって、まつ毛が長いなとどうでもいいことを考えた。
そして少しだけ驚いた。この人はあたしを恐れてる。明らかに年下のあたしを。
というよりは、自分に自信がないんだろうなと思う。地味で冴えない、高校時代は派手な上位グループの連中に真っ先に蔑まされて、クラスの端っこでいじめの標的にならないように、ひっそり息を潜めていた感じ。
スクールカースト最下層にいたんじゃないか。
そういうあたしも、中堅のグループで派手グループの反感を買わないよう、波風立てず、のらりくらり生きてきたタイプだから、彼女を見下せるような立場にいなかったし、あたしももう大学生で、さすがにあの頃のように人を見た目の派手さや明るさで判断したりはしないけれど、この人の具合を見ていると少し下に見たくなる気持ちもわかる。
「……とらないで、とは、」
「……レオのこと」
一瞬言っている意味が分からず、眉を顰めてしまった。