あの夏に戻れたら…
12年前
「わあー!スゴイスゴイ!!」
「こら!しょうこ!危ないよ!」
キャンプ場で走り回る少女と、彼女を追いかける少年の姿を、周りにいる親達は微笑ましく眺めている。
「ほら!捕まえた!」
「もー!隆にぃ(りゅうにぃ)あしはやすぎ!てかげんしてよ!」
兄に捕まえられた少女は、頬を膨らませて抗議する。
「良いわね、しょうこちゃんは元気で。
見ていて明るい気持ちになれるわ。」
黒い長髪を緩く1つに結んだ女性が、そんな二人を見て複雑な面持ちで呟く。
「健太くんも、手術をしたらきっとしょうこみたいに走り回れるようになるよ。もう、すぐにあっちこっちに行っちゃって、友美(ともみ)さんが大変なくらい!」
友美と呼ばれる女性を明るく励ますのは、笑顔が印象的なしょうこ達3兄妹の母親、奈央。
友美の次男、健太は、心臓病で手術を必要としている。
「ごめんね、そんなつもりじゃなかったの。
子供達が大きくなるのって、あっという間ね。
隆介(りゅうすけ)君も、うちの優太も、この前までランドセルを背負っていると思ったら、もう中学校の制服を着ているんだもの。耕介くんはもう五年生で、しょうこちゃんと健太ですら、もう小学生よ。」
友美は、暗くなってしまった空気を払うようにして、努めて明るく言った。
「そうだよね。
ほんと、ありがと。友美さんが誘ってくれなかったら、キャンプなんてこれなかった。うちの旦那、アウトドアはからっきしダメだから。」
そう言いながら奈央は、向こうで友美の夫の春樹(はるき)の指導のもと、あたふたと昼食のタメの火起こしに挑戦している自分の夫、純平を情けないとでもいうように一瞥した。
「ううん。お礼を言いたいのは、うちの方。
優太も、子供一人じゃつまらないから。
隆介君たちが一緒に来てくれたおかげで、あんなに楽しそう。
どうしたっていつもは健太に構ってばかりになっちゃうから、たまには優太も遊びに連れていってあげたかったの。」
「友美、そろそろご飯の準備ができたから、子供達を呼んで来てくれ。
うちの店から材料を持ってきた、とっておきのもんじゃとお好み焼きだ!」
春樹に言われ、母二人は子供達の元へと行った。
「みんなー!ご飯だよー!」
お腹が空いていたのか、すぐに駆け寄ってくる。
「今日のご飯、なに?!」
しょうこがキラキラとした眼で訊ねる。
「どうせ、もんじゃかお好み焼きでしょ?」
「お!せいかーい!優太くん、勘が鋭いね!」
「ここまで来たっていうのに、もんじゃとお好み焼きかよ。」
「ここまで来たからこそだよ!この自然の中で、うちの店のもんじゃとお好み焼きを食べたら、もうほっぺた落ちちゃうぞ!
ほら、お前も手伝え!」
不満そうな顔で春樹に引っ張られていく優太に、皆が笑みをこぼす。
「ご飯食べたら、なにする?」
お好み焼きを頬張りながら、耕介がみんなに訊ねる。
「しょうこ、お花とりたい!けんちゃんに持ってってあげるの!」
「ありがとね、しょうこちゃん。でも、お花はいま摘んだら帰るまでに枯れちゃうから、後でにしようか。
そうだ、おばちゃんみんなが遊ぶかな?って思って水鉄砲持ってきたんだった。
ご飯食べたら、川に水遊びに行ったら?」
水鉄砲と聞き、耕介としょうこのテンションは一気に跳ね上がった。
「子供だけで危なくないか?」
「隆介君と優太はもう中学生。大丈夫だろ。
みんな、行っていいのは浅いところだけ、もし雨が降ってきたり雷がなったりしたら、すぐに川から離れるんだぞ。あと、もし何かあったらすぐに知らせにくること。おじさんとの、お約束!」
「うん!いってきます!」
「いってらっしゃい」
初めは心配していた純平も、春樹の言葉によって安心したようで、快く子供達を送り出した。
「こら!しょうこ!危ないよ!」
キャンプ場で走り回る少女と、彼女を追いかける少年の姿を、周りにいる親達は微笑ましく眺めている。
「ほら!捕まえた!」
「もー!隆にぃ(りゅうにぃ)あしはやすぎ!てかげんしてよ!」
兄に捕まえられた少女は、頬を膨らませて抗議する。
「良いわね、しょうこちゃんは元気で。
見ていて明るい気持ちになれるわ。」
黒い長髪を緩く1つに結んだ女性が、そんな二人を見て複雑な面持ちで呟く。
「健太くんも、手術をしたらきっとしょうこみたいに走り回れるようになるよ。もう、すぐにあっちこっちに行っちゃって、友美(ともみ)さんが大変なくらい!」
友美と呼ばれる女性を明るく励ますのは、笑顔が印象的なしょうこ達3兄妹の母親、奈央。
友美の次男、健太は、心臓病で手術を必要としている。
「ごめんね、そんなつもりじゃなかったの。
子供達が大きくなるのって、あっという間ね。
隆介(りゅうすけ)君も、うちの優太も、この前までランドセルを背負っていると思ったら、もう中学校の制服を着ているんだもの。耕介くんはもう五年生で、しょうこちゃんと健太ですら、もう小学生よ。」
友美は、暗くなってしまった空気を払うようにして、努めて明るく言った。
「そうだよね。
ほんと、ありがと。友美さんが誘ってくれなかったら、キャンプなんてこれなかった。うちの旦那、アウトドアはからっきしダメだから。」
そう言いながら奈央は、向こうで友美の夫の春樹(はるき)の指導のもと、あたふたと昼食のタメの火起こしに挑戦している自分の夫、純平を情けないとでもいうように一瞥した。
「ううん。お礼を言いたいのは、うちの方。
優太も、子供一人じゃつまらないから。
隆介君たちが一緒に来てくれたおかげで、あんなに楽しそう。
どうしたっていつもは健太に構ってばかりになっちゃうから、たまには優太も遊びに連れていってあげたかったの。」
「友美、そろそろご飯の準備ができたから、子供達を呼んで来てくれ。
うちの店から材料を持ってきた、とっておきのもんじゃとお好み焼きだ!」
春樹に言われ、母二人は子供達の元へと行った。
「みんなー!ご飯だよー!」
お腹が空いていたのか、すぐに駆け寄ってくる。
「今日のご飯、なに?!」
しょうこがキラキラとした眼で訊ねる。
「どうせ、もんじゃかお好み焼きでしょ?」
「お!せいかーい!優太くん、勘が鋭いね!」
「ここまで来たっていうのに、もんじゃとお好み焼きかよ。」
「ここまで来たからこそだよ!この自然の中で、うちの店のもんじゃとお好み焼きを食べたら、もうほっぺた落ちちゃうぞ!
ほら、お前も手伝え!」
不満そうな顔で春樹に引っ張られていく優太に、皆が笑みをこぼす。
「ご飯食べたら、なにする?」
お好み焼きを頬張りながら、耕介がみんなに訊ねる。
「しょうこ、お花とりたい!けんちゃんに持ってってあげるの!」
「ありがとね、しょうこちゃん。でも、お花はいま摘んだら帰るまでに枯れちゃうから、後でにしようか。
そうだ、おばちゃんみんなが遊ぶかな?って思って水鉄砲持ってきたんだった。
ご飯食べたら、川に水遊びに行ったら?」
水鉄砲と聞き、耕介としょうこのテンションは一気に跳ね上がった。
「子供だけで危なくないか?」
「隆介君と優太はもう中学生。大丈夫だろ。
みんな、行っていいのは浅いところだけ、もし雨が降ってきたり雷がなったりしたら、すぐに川から離れるんだぞ。あと、もし何かあったらすぐに知らせにくること。おじさんとの、お約束!」
「うん!いってきます!」
「いってらっしゃい」
初めは心配していた純平も、春樹の言葉によって安心したようで、快く子供達を送り出した。