それでもあなたを愛してる
2
それから一週間。
さすがにショックが大きくて、私は自分の部屋に引きこもっていた。
今日も大学はずる休みだ。
こんなに休んでいても、心配してくれる友達だっていない。着信のない携帯を見る度、つくづく自分は孤独な人間なのだと思い知らされた。
『ピンポーン』
朝の7時
いつものように圭吾が父を迎えに来た。
「おはようございます」
吹き抜けの玄関ホールに、圭吾の声が響く。
私は耳を塞ぎながら、ベッドの中へと潜り込んだ。
もう顔なんて見たくないし、声だって聞きたくない。
圭吾は私を送り届けたあの夜に、車の中で言ったのだ。
父から報酬を受け取ったら、七葉さんと籍を入れて、二人で新しく会社を始めるつもりなのだと。
愛なんて、どこにもなかった。
甘い言葉も
情熱的なキスも
全てがニセモノだったのだ。
「お嬢様。朝食をお持ちしました。お体の方はいかがですか?」
父が出かけて行った後、家政婦のマサヨさんが部屋をノックした。
今年で還暦を迎えるマサヨさんは、母が亡くなった後から住み込みで働いてくれているのだけど、病気のお父様を介護することになり、今週いっぱいで仕事を辞めてしまう。
最後の最後に、こんな姿を見せてしまって申し訳ないとは思いつつ、私はどうしてもこの苦しみから抜け出せないでいた。
「ごめんなさい。そこに置いておいて。後で食べるから」
弱々しく返事を返すと、マサヨさんは『承知しました』と言って、そのまま下へと降りて行った。
こうして、今日も孤独な一日が始まってしまった。