それでもあなたを愛してる

「お嬢様!!」

圭吾と病院に駆けつけると、マサヨさんがロビーに降りてきてくれた。

「社長の容態は?」

「はい。大丈夫です…このまま入院にはなりますけれど」

「じゃあ、無事なのね? お父さん」

「は…はい」

そんな会話を交わしながら、急いで病室へと向かった。

「ここです」

エレベーターを降りてすぐ、『特別室』と書かれた部屋の前でマサヨさんが足を止めた。

『ガラガラ』と扉を開けると、父がベッドに横たわっていた。
 
「お父さん!」

「おー佐奈。心配かけてすまないな」

弱々しく笑う父。
体には心電図のような機械が取り付けられて、酸素マスクをしていた。

まさか、こんなことになるなんて……。
涙がポタリとこぼれ落ちた。

「お父さん、ごめんなさい! 私のせいで…私の…せいで」

すると、父は自分で酸素マスクを外してこう言った。

「いや、違うんだ。佐奈のせいじゃないよ。実はお父さんはな、重い心臓病を患っていてな、発作はそのせいなんだよ。先月の定期検査で、ちょっと深刻な結果が出てしまって……な」

父はそこで言葉を止めて、宙を仰いだ。

「どうやら、そんなに長くないらしいんだ」

「え……」

父の衝撃的な告白に言葉を失った。

「私も、先ほどお聞きしたんです」

マサヨさんがハンカチで顔を覆いながら泣き出した。
圭吾だけは知っていたのか、私の様子を心配そうに見つめていた。

「本当は、おまえにちゃんとフィアンセが見つかってから打ち明けるつもりだったんだが…。思いのほか進行が早くてな…。佐奈、すまない」

父の目から、涙が流れ落ちていった。



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