それでもあなたを愛してる
「佐奈。そろそろ起きて」
耳もとに甘い声か響く。
ゆっくりと目を開けると、恋人の圭吾が優しいまなざしで私を見つめていた。
「おはよう。佐奈」
「おはよう。圭吾」
キングサイズのベッドに豪華なシャンデリア
ここは都内にある高級ホテルのスイートだ。
昨日、ハタチの誕生日を迎えた私は、この素敵なスイートルームで『私の初めて』を捧げるはずだった。
でも…。
「ねえ、圭吾。私って…昨日…どうしたのかな」
恐る恐る、圭吾に尋ねてみる。
そう、私にはサッパリと記憶がなかった。
この部屋でワインを飲んだところまでは覚えているんだけれどな。
すると、
「ああ…。佐奈は酔っぱらって、そのまま気持ち良さそうに寝ちゃったよな」
圭吾は思い出したようにクスリと笑う。
「うそ…。やだ、私。昨日は圭吾との大事な日だったのに……」
私はガックリと項垂れる。
ずっと、この日を心待ちにしていたからだ。
「あ!じゃあ、今からでも…」
私はパッと顔を上げた。
「うん。また時間のある時にな」
圭吾は私の頭を撫でながら、柔らかく笑った。
そして、
「ほら、早くシャワー浴びといで。大学に遅刻しちゃうぞ」
「う、うん」
私は圭吾に急かされながら、渋々バスルームへと向かったのだった。