それでもあなたを愛してる
「うん」
私はコクコクと頷き、ワンピースを持って試着室へと向かった。
淡いピンク色のワンピースはとても素敵で品がよく、ひと目見て気に入ってしまったのだ。
「まあ、よくお似合いですわ!」
店員さんの顔がぱあっと明るくなった。
「うん。ほんとだ。よく似合うな。これに決めようか、佐奈」
圭吾の言葉に、私はにっこりと頷く。
「ご一緒に、このパンプスもいかがですか?」
店員さんはワンピースに合う靴をサッと差し出してきて。
「そうだね。じゃあ、その靴も」
なんて、圭吾もアッサリと承諾。
結局、私は恋人でもない圭吾から、随分と高価な誕生日プレゼントを送られてしまったのだった。
…………
「ダメダメ、靴代は後で返すってば」
「いいよ。誕生日プレゼントだって言ってるだろ?」
「それなら、このワンピースだけで十分だから」
お店を出た後、しばらくそんなやり取りを繰り返していたのだけど。
「佐奈。こういう時は男にカッコつけさせるものだよ。ちゃんと覚えておきな」
なんて言いながら、圭吾は私の頭をワシャワシと撫でた。
「そ、それじゃあ……お言葉に甘えて。どうもありがとう」
「うん」
ぎゅっと手を握られた。
今日の圭吾はすこぶる機嫌がいい。
さっきは少し顔色が悪いように見えたけれど。
あれからは、ずっとニコニコと笑っている。
ようやく、私を縁談相手と引き合わすことができるからだろうか…。
なんて、そんなことをこっそり考えて、少しだけ落ち込んだのだった。