それでもあなたを愛してる

圭吾との出会いは、ちょうど2年前の冬。
私がまだ高校生の時だった。


『彼は新しい秘書の真崎くんだ。なかなかいい男だろ?』

大手不動産会社の社長を務める父が、会社の創立記念パーティーの会場で圭吾を私に紹介したのだ。

『真崎といいます。これから、自宅の方にもお邪魔するかと思いますが…どうぞ宜しくね』

そう言って、にっこりと微笑んだ圭吾。

その甘く整った顔立ちは、まるで王子様のようで。
私は一瞬にして心を奪われてしまった。

憧れは、すぐに本気の恋へと変わり。

『好きです。私とお付き合いをしてもらえませんか?』

とうとう、私は告白したのだ。

6つも年下の高校生なんて、きっと相手にされないだろうと玉砕覚悟だったけれど。

圭吾は快く応じてくれた。

『僕でよければ喜んで。佐奈ちゃんのこと、ずっと大事にするね』

そんな言葉をもらえた時は、感極まって彼の胸で思いきり泣いてしまった。

父も応援してくれて、私達の交際は順調にスタートした。

5年前に母を事故で亡くしてから、私はずっとふさぎ込んでいたけれど。
圭吾のおかげで、ようやく笑えるようになったのだった。

そして、
19歳の誕生日を迎え、
圭吾と初めてのキスを交わした。


『キス以上のことは佐奈がハタチになってからな。社長と約束しちゃったから』

圭吾からそう言われた。

私はキス以上のことがどういうことなのか、あまりよく理解していなかったのだけど。

きっと、それは尊い行為で。
圭吾との愛の絆が深まることなのだろうと思った。

だから、私はハタチの誕生日が来るのを、ずっと心待ちにしていた。

それなのに、
お酒に酔って台無しにしてしまうなんて。
本当に何やってるんだろう…私。

バスタブに浸かりながら、何度も後悔のため息をついたのだった。


< 3 / 90 >

この作品をシェア

pagetop