それでもあなたを愛してる
5~西島光輝side~
「予約した西島です」
仕事を早めに切り上げて、約束のレストランへとやって来た。
「お久しぶりでございます。西島様。お連れ様はお見えになっておられます」
クロークにコートを預けていると、奥から支配人が姿を現した。
「そうですか」
俺は彼の後に続いて、海外のアンティーク家具が並べられた廊下へと進む。
確か前回来たのは、圭吾の姉と俺の兄貴を引き合わせた時だったな。
あれから三年が経ち、
今度は俺が、圭吾にとって“命よりも大事なお姫様”を託されることになろうとは。
神もなんて残酷な試練を、彼に与えたものだろうと思う。
俺はふうと息を吐きながら、窓際のテーブルへと視線を移した。
すると、そこには仲睦まじく見つめ合う相思相愛の二人が見えた。
俺は思わず足を止めた。
「支配人、すみません。ちょっと用事を思い出してしまいました」
俺はスマホを手に引き返した。
『あ……ごめん、圭吾。仕事でちょっと遅れそうだから、先に二人で食べててくれるか? ああ…デザートくらいは一緒に食えるかな。ああ、悪いな』
こんなことをしたって、何かが変わる訳じゃないのだろうけれど。
彼に与えられた彼女との時間は残り僅か。
二人の幸せなひと時を、とても邪魔する気になんてなれなかったのだ。