それでもあなたを愛してる
お見合いの日から三日後。
私は西島さんの車で、父の病院へと向かっていた。
『佐奈。明日光輝が迎えに来るから、二人で社長のところに行って、婚約のこと報告してきて』
昨日、圭吾からそう言われたからだ。
『圭吾は一緒じゃないの?』と聞くと、『あたりまえだろ』と返され、『どうして?』と聞くと、『あとのことは光輝に任せてあるし、俺も後任者への引き継ぎで忙しいから』と言われてしまった。
あんなに甘やかしてきたくせに。
婚約が来まった途端、手のひらを返して私を突き放してくる圭吾に、私はショックを受けていた。
それでもご飯を作ってくれたり、家事だって手伝ってくれているのだから、文句なんて言ってはいけないのだろうけれど。
それにしてもと、
私は深くため息をつく。
「佐奈ちゃん。どうかしたの? 具合でも悪い?」
運転席から、西島さんが心配そうに私を見つめた。
「あ…いえ。大丈夫です」
私は慌てて笑顔を作る。
「そう…。ならいいんだけど。ところで。今日は少し遅くなっても平気かな? うちのホテルで婚約パーティーの打ち合わせをしときたいんだけど」
「え? 婚約パーティー……ですか?」
うそ。
もうそんな話になってるの?
「あれ? 圭吾から聞いてない? 再来週にでもっていう話なんだけど」
「いえ、だって…。まだ西島さんのご両親にもご挨拶していないのに……」
そうなのだ。
西島さんのお父様が、奥様同伴で長期の海外出張に行かれている為、結局まだお会いできていなかった。
「まあ、それはそうなんだけど…。結婚の許可なら取ってあるから気にしなくて大丈夫だよ。それより、佐奈ちゃんのお父さんに早く花嫁姿を見せてあげないと。時間もそんなにないって……圭吾から聞いてる」
「あ…」
そうだ。
こんなに早いペースで準備が進められているのは、全て父の為。
西島さんは、うちの事情に合わせてくれてるだけなのだ。
「そうですよね。ホントにすいません。西島さんをうちの事情に巻き込んでしまって…。いくら政略結婚だからって本当に申し訳ないです」
いくら恋愛をすっ飛ばした結婚だからって、あまりにもこれじゃ…。
「佐奈ちゃん。誤解してるみたいだけど、僕はちゃんと佐奈ちゃんのことを好きだからね。佐奈ちゃんにも、いつか圭吾のことを吹っ切って、僕を好きになってもらえたらなって思ってるし」