それでもあなたを愛してる
「え!」
西島さんの言葉に、思わず動揺する。
「あ…あの……」
バレてるの?
私が圭吾を好きなこと知ってるってこと?
ビックリして、変な汗が出てきた。
ちょうど赤信号で車が止まり、西島さんは真剣な顔で私をまっすぐに見た。
「ごめんね。その辺の事情も全部聞いてるんだ。知っててこの話受けた。僕ね、政略結婚なんて全く興味なかったんだけど、佐奈ちゃんとならいいかなって思ったんだよ。つまり、佐奈ちゃんに一目惚れしたってこと」
「西島さん…」
そして、更にこう続けた。
「でも大丈夫。無理して圭吾を忘れろなんて言わないから。圭吾を愛してる佐奈ちゃんごと、僕は愛していく覚悟もできてるし。だから佐奈ちゃんは、苦しまないで欲しいんだ」
「あ…あの…私」
言葉の代わりに涙がこぼれた。
まさかそこまでの覚悟をしてくれていたなんて。
覚悟を決めなきゃいけないのは私の方なのに。
「ごめんね。泣かしちったね」
西島さんは優しく笑いながら、私の頰にそっと手を触れたのだった。
………
病院に着くと、正面玄関から出てきた圭吾とちょうど出くわした。
「圭吾」
私の声で、圭吾が足を止める。
声をかけた後、しまったと思った。
隣に七菜さんがいたからだ。
しかも、圭吾の右手は彼女の左手をしっかりと握っている。
「なんだ。もう帰るのか?」
固まる私の代わりに、西島さんが声をかけた。
「ああ。もう俺達の用は済んだから。じゃあ、佐奈を宜しくな」
圭吾はそう言うと、私には目もくれずに去って行ったのだった。