それでもあなたを愛してる

それから、5分くらい経った頃だろうか。
後ろに人の気配を感じた。


西島さんかなと思い、振り向こうとしたその瞬間。
背中をドンと押された。

「キャ!!」

私はそのままバランスを崩し、噴水の中にポチャン。

深さは膝丈くらいだったけれど、全身冷たい水に浸かってしまった。

「大丈夫ですか!」

サワザワと人が集まってきた。

「佐奈ちゃん!!」

ちょうど戻ってきた西島さんに、噴水から助け出してもらったのだけど。

服はもちろんのこと、中の下着までビショビショに濡れてしまった。

「一体何があったの?」

西島さんが心配そうに訊いてきた。

「えっ…と。ちょっと一瞬貧血っぽくなって、バランスを崩しちゃって」

咄嗟に嘘をついてしまった。

誰かに突き飛ばされたように感じたけれど、西島さんに余計な心配をかけたくなかったのだ。

「そっか。とにかくこのままじゃ風邪引くから、空いてる客室に行こうか」

私は西島さんの言葉に頷いて、すぐにホテルの部屋へと移動した。


「佐奈ちゃん。バスタブにお湯はっといたから、とりあえず温まっておいで」

「ありがとうございます」

「服はクリーニングに出しておくね。2時間くらいかかるけど、その間にルームサービスでも食べてよう。それと、新しい下着は女性スタッフに届けさせるから心配ないよ」

と、こんな感じに、西島さんは何から何まで手際よく動いてくれて…。
 
何とか日付が変わらないうちに、
私をもとの姿で自宅へと送り届けてくれた。


………


「おかえり。随分遅かったね」

玄関を開けると、圭吾が待ち構えていたように立っていた。

「あ、うん。ちょっと色々あって……」

「色々って何?」

何故かしつこく訊いてくる。

「別に圭吾には関係ないでしょ」

フンと圭吾の横を通り過ぎようとした瞬間、腕をグイッと引き寄せられた。




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