それでもあなたを愛してる

「あ…今、片付けますね」

テーブルにあったハンバーグの残りと食べかけのケーキを慌ててキッチンに下げる。

「これって、圭吾の為に用意したの?」

「あ、はい…。でも、今日は誕生日だから彼女と一緒にいるみたいで。もったいないので、一人で食べてたところです」

私はできる限り明るく答えた。

婚約パーティーの前日に圭吾のことで泣いていたなんて、西島さんに対して、あまりにも失礼だと思ったから。


すると、

「あのね、佐奈ちゃん。圭吾のことなんだけど」

西島さんは少し言いにくそうに切り出した。
私は手を止め、黙って西島さんを見つめた。

「実はあいつね…ニューヨークで仕事を始めるらしくて、明日の朝の飛行機で日本を発つらしいんだ」

「え? 明日の……」

私は言葉を失った。
そんなこと一言も言ってなかったのに。

「それでね、今夜は空港近くのホテルに泊まるから、もうここへは戻ってこないそうだよ」

「そう……ですか」

まさか、サヨナラさえも言わせてもらえないなんて。
さすがにショックだった。

「ねえ、佐奈ちゃん。一日早いけど、良かったら今夜からうちで暮らさない?」

「え?」

西島さんの言葉に思わず目を丸くする。
いざ今夜からと言われて、思わず動揺してしまった。

「でも……今日はもう遅いですし」

「うん。でも、こんなに広いお屋敷に、佐奈ちゃん一人を置いとくのは僕も心配なんだよ。この辺空き巣被害も多いみたいだしね。とにかく、着替えだけ準備すればいいから、このままうちにおいでよ。ね?」

私に断る理由なんてなかった。

「分かりました。宜しくお願いします」

こうして、圭吾とのあっけない別れを迎えた私は、西島さんと共に彼のマンションへと向かうことになったのだ。





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