それでもあなたを愛してる

病院に救急搬送された圭吾は、すぐに処置室へと運ばれた。

幸い傷も浅く、命に別条はなかったようだけど。
処置室から出てきた圭吾は、そのまま脳外科病棟へと移された。

『どうして腰の怪我なのに脳外科なんですか?』

看護師さんに尋ねてみたけれど、家族以外には答えられないと言われ、私は不安をかかえながら麻酔で眠る圭吾のそばに付き添っていた。

「佐奈ちゃん。圭吾はどう?」
「お嬢様、遅くなってすみませんでした」

しばらくして、西島さんと七菜さんが病院に駆けつけた。

実はあの後、父が目まいを起こしてしまったそうで。
西島さんと七菜さんが、落ち着くまで父に付き添ってくれていたのだという。

今は病院に戻り、元気にしているそうだけど。

「あの…父のことすみませんでした。圭吾のことも何てお詫びしたらいいか」

私は七菜さんに頭を下げた。
彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

私のせいで圭吾に大ケガをさせた挙げ句、知らなかったとはいえ、恋人の一大事に父の世話までみさせてしまったのだから。

本来、圭吾に付き添うべきなのは七菜さんの筈なのに。

「いえ。お嬢様おやめ下さい」

頭を下げ続ける私に七菜さんが首を振る。

「あ…そうだ。指輪もお返ししないと。大事な指輪までホントにすみませんでした」

私は急いで指輪を外し、彼女の前に差し出した。

すると、七菜さんは思い詰めた表情で、突然私に頭を下げた。

「お嬢様、申し訳ありません。今までのことは全部お嬢様の為についた嘘でした! でも……このままじゃ…彼もお嬢様も…あまりにも」

七菜さんは、言葉を詰まらせ泣き出してしまった。

「あの……七菜さん?」

驚いて顔を覗き込むと、彼女は手で涙を拭い、自分を落ち着かせるように大きく息を吐き出して、私を見つめた。

「その指輪の刻印を見て下さい。それが彼の本心です」

「指輪?」

私は手に持っていた七菜さんの婚約指輪に視線を移す。

そして、ゆっくりと顔の高さまで近づけた。

「うそ…。どうして?」

思わず目を見開いた私。
しばらく呼吸を忘れるくらいの衝撃だった。

「ここからは僕が説明するよ」

それまで黙っていた西島さんが、私の前へと踏み出した。



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