それでもあなたを愛してる
それから、間もなくして、佐奈から告白された。
『好きです。私とお付き合いしてもらえませんか?』
顔をまっ赤にさせて俯く彼女に俺は笑顔でこう答えた。
『僕でよければ喜んで。佐奈ちゃんのこと、ずっと大事にするね』
すると、彼女はヒクヒク泣き出して、俺の胸へと飛び込んできた。
そんな彼女が可愛くて、愛しくて。
思わず彼女の唇を奪いそうになった。
けれど、寸前のところで社長との約束を思い出した。
“すまないが、佐奈が成人するまでは手を出さないでもらえないだろうか…。あっ…一年経ったらキスくらいなら許すよ。でも……それ以上は”
“分かりました。お約束します”
この子の為なら何だってできると思った。
誰にも渡したくない。
彼女は一生俺だけのもの。
そんな想いをいだきながら彼女を抱きしめたあの日のことを、今でもハッキリと覚えている。
……
そして、季節は春になり、佐奈は推薦が決まっていたS大へと進学した。
『あのね、圭吾。サークルっていうものに勧誘されたんだけど…入ったらお友達できるかな?』
入学式の帰りに、佐奈が俺に尋ねてきた。
『何のサークル?』
『えっと、イベントや飲み会がメインだって言ってたかな…』
佐奈が誘われてきたのは、いわゆる『飲みサー』というやつだった。
せっかく『友達を作りたい』と前向きになった彼女に、水を差すようなことは言いたくなかったけれど。
『佐奈。そういうサークルはさ…未成年にも無理やりお酒を飲ませたりするよ。いいの?』
『ううん。よくない』
真面目な彼女はブルブルと首を振った。
『もっと、ちゃんとしたサークルもあるはずだから、よく探してごらん。天文サークルとか音楽サークルとか…佐奈が興味を持てるようなサークルもあるんじゃないかな』
『うん。そうだね』
なんて、佐奈は笑顔で頷いていたけれど。
結局、その後、社長からサークル自体を反対されて、佐奈がサークルに入ることは叶わなかった。