それでもあなたを愛してる
「それじゃ、玲奈、今日の合コン頑張って。いい報告待ってるからね!」
「うん。ありがと。千紗もバイト頑張ってね~~!!」
門の前で迎えの車を待っていると、そんな会話が聞こえてきた。
皆な、バイトだったり、合コンだったり、サークルの集まりだったりと。
このあとも、様々な予定があるのだろう。
ちょっと羨ましく思う時もあるけれど。
私には圭吾がいてくれるから。
友達なんていなくても私は十分幸せだった。
そう…。
私の世界は、圭吾を中心に回っていたのだった。
それにしても。
2月の空気はとても冷たい。
どんよりとした雲は今にも雪を降らせそうだ。
体もそろそろ限界に近づいた頃、黒い外車が門の前に止まった。
「お嬢様、お迎えにあがりました」
運転席から降りてきたのは、父の元秘書だった西澤さん。彼は定年を迎えた後、江波家の運転手となり、主に私の送り迎えを担当してくれている。
西澤さんは車のドアを開けて、私に深く一礼した。
「どうもありがとう」
ようやく寒さから解放され、ホッとしながら後部座席へと乗り込んだ。
「それでは出発致します」
西澤さんは、ゆっくりと車を走らせた。
「そう言えば、お嬢様。今日は旦那様も早くお帰りになるそうですよ。何でもお嬢様に大事なお話があるとかで」
ひとつ目の交差点を過ぎたところで、西澤さんがそんなことを言い出した。
「大事な話?」
「はい」
「そう……。何かな」
もしかして、圭吾との結婚の話!?
だって、ハタチの誕生日は外泊までしてきた訳だしね。
そういうことになってもおかしくないよね。
勝手な妄想をしながら、ひとり幸せに浸っていた。