それでもあなたを愛してる
夜になると、園内はライトアップされて、花火が打ち上げられた。
俺は佐奈を観覧車に乗せて、用意していたハートのネックレスをプレゼントした。
“19歳の誕生日はシルバーアクセサリーを贈られると幸せになれる”
そんなジンクスがあったことを思い出し、仕事帰りにティファニーに駆け込んだのだ。
『佐奈。つけてあげるから後ろ向いてごらん』
『ありがとう、圭吾。大事にするね』
佐奈は気に入ったといって、すごく喜んでくれた。
そして、この夜
俺は佐奈に初めてのキスをした。
『キス以上のことは佐奈がハタチになってからな。社長と約束しちゃったから』
『来年の誕生日は“佐奈の初めて”をもらうから』
そんな俺の言葉を佐奈がどこまで理解したかは定かではないけど、彼女は『分かった』と言って、笑顔で頷いていた。
…………
それから間もなくのこと、社長から大事な話があると言われ、俺はいつもの料亭へと連れて行かれた。
『大事な話というのは何でしょうか?』
社長のグラスにビールを注ぎながら尋ねると、社長はいつになく深刻な顔でこう言った。
『実は、先月の人間ドックで引っかかってしまってね。どうも心臓に疾患があるらしいんだ。まあ、薬での治療になるそうなんだが、この先いつどうなるか分からない。だから…君の気持ちを確認しておこうと思ってね』
そして、俺にこう問いかけてきた。
『君には、佐奈と結婚して私の後を継ぐという覚悟はあるのかね?』
そんな社長の言葉に、俺は姿勢を正し、社長の目を見て『あります』と答えた。
すると、社長は安堵の表情を浮かべた。
『そうか。良かった。じゃあ、来年の佐奈の誕生日にプロポーズしてやってくれないか?』
『来年の誕生日ですか?』
『ああ。佐奈が成人したら婚約して欲しいんだ。万が一私の身に何かあっても、君が佐奈のそばにいてくれれば安心だからね。それから、悪いが私の病気のことは、まだ佐奈には伏せておいてもらいたい』
『分かりました』
こうして俺は、佐奈と会社の将来を託されることとなったのだ。