それでもあなたを愛してる
その後、佐奈を先ほどの店へと連れて行き、取り置きしてもらっていたワンピースを着せた。
思った通り、佐奈によく似合っていた。
『俺からの誕生日プレゼントな』
初めは遠慮していた佐奈だったけれど、淡いピンク色のワンピースがよっぽど気に入ったらしく、目をキラキラさせながら喜んでくれた。
そんな佐奈が可愛くてたまらなかった。
このまま時が止まればいいのに。
そんなことを考えながら、俺は佐奈の手をギュッと握った。
………
光輝は一時間遅れて、約束の店にやって来た。
『お待せ』と現れた光輝を見て、佐奈が『あっ!』と声を上げた。
まさしく“運命の再会”だ。
ポカンする佐奈に光輝が事情を説明する。
『僕が佐奈ちゃんの見合い相手でした。と言っても、実は僕も圭吾から写真を見せられて知ったんだけどね』
ちょっと設定に無理はあったけど、佐奈は素直だから驚きながらも光輝の言葉をそのまま信じたようだった。
途中、光輝が口を滑らしそうになった時は、テーブルの下で彼の足を思わず蹴ってしまったけれど。
とりあえず、佐奈と光輝の顔合わせは無事成功した。
……
『どうだった?』
帰りの車で佐奈に尋ねた。
『うん。とっても素敵な人だよね』
佐奈の表情は明るかった。
『それは……彼となら結婚してもいいってこと?』
『うん。もちろん』
即答する佐奈に、俺は上手く笑えなかった。
『分かった……返事しとくよ』
それだけ言うのが精一杯。
そうなるように仕向けたのは俺だし、勿論こうなることを望んでいたはずなのに。
光輝に佐奈の心を一瞬でもっていかれた気がして。
嫉妬でどうにかなりそうだったのだ。
そんな立場じゃないのにな。
自分の身勝手さにホトホト呆れてしまう。
その夜は、どうしても佐奈の顔が見れなかった。
いや、嫉妬に狂った醜い自分を見せたくなかったのだ。