それでもあなたを愛してる
「だから、もう、真崎はおまえの恋人ではないんだよ。真崎との契約は昨日で終わってしまったんだ」
父は固まる私に残酷な言葉を口にする。
「それでだな…。ここからが本題なんだが、真崎とのことはいい思い出にして…ちゃんとした結婚相手を探さないか? 実は佐奈にいい縁談があるんだよ。佐奈もハタチになったことだし、いい機会だから会うだけでも会ってみないか?」
そんな無茶苦茶なことを言う父を、私は睨んだ。
父に反抗したことなんてなかったけれど、今回はさすがに許せないと思った。
「ちょっと、いい加減にしてよ! 勝手に圭吾とのこと終わらせないで!!」
「いや…佐奈の気持ちは分かるけど、もう真崎はただのお父さんの秘書だよ。佐奈とは何の関係もない男だ」
「そんなことない!」
それでも、私は圭吾のことを信じている。
確かに初めは、父に頼まれて私と付き合い始めたのかもしれないけれど。
圭吾の私への愛情が本物だったことは、私が一番よく分かってる。
大丈夫。
圭吾はニセモノの恋人なんかじゃない!
私はまっすぐに父の目を見た。
「ねえ、お父さん。圭吾は何て言ってるの? 私達、今は本当に想い合ってるよ」
すると、父は顔をゆっくりと左右に振った。
「佐奈……。残念だが、彼には結婚を考えている恋人がいるそうだ」
「そんな…はず……。やだ、信じない! 私、そんなの信じないんだから!」
私は泣きながら、リビングを飛び出した。
「おい!佐奈。どこへ行く気だ!」
追い掛けてきた父が、玄関で私の腕を掴んだ。
「離してよ!! 圭吾のところに行くんだから!」
私は父の手を振り切って、圭吾のマンションへと向かったのだった。