それでもあなたを愛してる
ーそんな中、彼女は嵐のようにやって来た。
入籍して5日目のこと。
父の病院から戻ってくると、美女が圭吾のことを抱きしめていた。
お昼用に買ってきた私のお弁当は、またしても床にバサッと落ちた。圭吾がハッと気づき、慌てて美女を離す。
「あっ…もしかして、あなたが奥さんかしら?」
固まる私に美女が言う。
もしかして愛人でも押しかけてきたのだろうか。
心臓があり得ない早さでバクバクと鳴り出した。
「そ…そうですけど。あなたは誰なんですか?」
泣きそうになりながらそう返すと、圭吾が「違うんだ、この人は」と首を振り、美女が「姉の塔子よ」と続けた。
「へ!? お姉さん……ですか?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
うそ、圭吾のお姉さんなの!?
言われてみれば、綺麗に整ったその顔はどことなく圭吾の面影がある。
唖然とする私を見て、圭吾が申し訳なさそうに言った。
「驚かせてごめんな。この人、いきなり入ってきて、俺に抱きついてくるもんだから」
「ちょっと、そんな言い方ないでしょ。こっちは、あなたの為にアメリカ中を駆け回ってたんだから」
そう言うと、お姉さんはベッド脇にある椅子に腰かけて、バックの中から茶色い封筒を取り出した。
そして、私達を見つめて言ったのだ。
「二人に大事な話があるの。どうするかは二人でよく考えて結論を出して欲しい」
お姉さんが手にしていたのは、英文で書かれたセカンドオピニオンの回答書だった。
それが吉とでるか凶とでるかは分からなかったけれど、真っ暗だった暗闇に一筋の光が差した瞬間だった。