【短編】お菓子な関係
友達でも、恋人でもない。
でもそんな微妙な距離感が、心地よくさせているんだと思う。
学校という苦手な場所で、初めてできた好きな時間。
だけど…。
「今日で…最後」
「へっ?」
最後の一切れをサクッと口に放り込んだ星川くんはかすかな私の声に気づいてくれた。
不思議そうに目を大きくして口をもぐもぐさせながらこちらを見る彼は、年上なのにすごく可愛い。
あざといな。
風の噂で、星川くんは結構モテるって聞いたことがあるけど、本人はそれに気付いてなさそう。
罪な男である。
「今回のテスト、赤点が1つでもあったらこれからはまっすぐ家に帰って勉強するって約束なの」
「……」
「だからもう、」
なんでだろう。
なんで泣きそうになってるんだろう。
この放課後の時間がなくなったって、好きなお菓子作りはいくらでもできるのに。