ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
なのに、妹を汚すライバルが現れる。
“彼氏”という邪魔者だ。
このままでは、あぶない。
ことみをキレイな状態で保存する方法はないかと、いろいろ調べてみた。
人間を剥製にできるのか。
できないとしたら、人を漬けられるほどの大量のホルマリンはどこで買えるのか。
毎日夜中までネットを検索していると、ある日、となりの部屋から聴き慣れたK-POPが流れてきた。
ことみの携帯の着信音。
普段から使っていた聴診器を壁に当て、会話を拾う。
守るというのも、実に大変だ。
妹は電話の最後にこう言った。
『今から行くね』
僕はそれを聞いてあわてたなー。
きっと、彼氏からの呼び出しにちがいないと。
若い男女が夜中に会ってすることなんて、ひとつしかない。
『守らなきゃ……』
汚れないように。
妹がこっそり家を出たあと、僕も後を追って玄関へ。
そこでは、愛犬が首を傾げながら目を潤ませていた。
『お前も行きたいのか?』
僕の問いに、胸が締めつけられるような、か細い鳴き声で答える。
『しょうがないな。連れてってやる』
愛犬を抱え、今にも見えなくなりそうな背中を追う。
妹は15分ほど歩き、川べりの砂利道で止まった。
周囲を見渡し、誰かを捜しているかのよう。
夜中にこんな所で待ち合わせなんて、男のセンスを疑う。
『ことみ!』
『ぉ、お兄ちゃん!?』
怯えながら驚くその顔も、実に可愛い。
『ダメじゃないか! こんな時間に……』
『は? ほっといてよ』
『帰るぞ!』
僕は妹の手を引く。
『はな゛してっ!』
すぐさま、邪険に振り払われる。
怒った顔もまた、可愛いすぎて興奮する。