ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



心は移り変わりゆくもの。身体は衰えてゆくもの。

ただ1つだけ変わらないのは、“命”そのもの。

ことみのそれは今まさに、僕の手中だ。

またも、ふと手の力を弱めてみる。

『ゲホッ! ケホッ……ぅ゛』

弱り、苦しむ顔を上から眺めるために。

絶景。

僕は、今、神だ。

あえて逃がし、再び追いかける。

恐怖に怯えたその表情が見たくてたまらないから。

しかし……。

『ゃ゛……ぉ、にぃ……ち』

『……ぁれ?』

『…………』

『ぁ゛!』

興奮しすぎた僕は、力の加減を忘れてしまい……。



我に返ると、妹は死んでいた。



『あ゛――ぁ゛!!』

さすがに気が動転し、周囲を見渡す。

目撃者は、雑草にマーキングしている愛犬だけ。

『ホッ……』

胸を撫でおろす。

改めて屍となった妹を見ると、死んだ顔も可愛くてキュンとする。

だが!

『ッ゛!?』

気配を感じて視線をあげる。

土手の上に、女のシルエット。

そのフォルムに見覚えがあった。

『菜摘……』

妹の親友だ。

彼女は、冷酷な瞳でこっちを見ていた。殺気漲る目で……。

かと思うと、視線を外し、歩きだす。

何事もなかったように、目の前を横切っていく。

月に照らされたその横顔は、笑っていた。

『私は知っている』とでも言わんばかり。



 
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