ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



「妹、前原ことみを殺したのはキミだね?」

この言葉で、新八がすべての真相に辿り着いたと知り、僕は言葉を失う。

動揺を察知してか、自信が滲みでている口調で、彼は謎解きを始めた。

「捜査資料を何度も見返した。現場に足を運んで、この目でも見たよ。そして、いくつかの答えが出たんだ」

妹の遺体が見つかった川のほとりから少し上流に、遺留品が点在していた。

それに加え、川辺に沿って生えている草が数ヶ所、重い物が乗った跡のようにへし折れていた。

おそらく逃げる妹を追いかけ、押し倒し、首を絞めては失敗し、またその繰り返し。

よって、犯人は力の弱い人物であることが推測された……。

「はたして、そうだろうか? 犯人はわざと手を抜いたんじゃないか? いわゆる快楽殺人だよ。逃げる彼女を何度も追い、手にかける。その命を自分の所有物だと優越し、快感を得る。凶器はただ1つ、歪んだ人間が持つ“狂気”さ」

「ち、力の弱い、女じゃないって、どうして言い切れるんだ!」

直接的死因は、“頸動脈圧迫による窒息死”。

肺の中に川の水は微量しか含まれていなかった。

しかし、草が倒れている箇所はいくつかあるものの、引きずった跡がない。

殺したあと、犯人が死体を“持ちあげ”、川に投げこんだと推測するのが妥当だ。

「そう。女には到底、無理なんだ。そして、川に投げこんだ理由も、ちゃんとあった。私は、隠されていたメッセージも読み取ったよ」

なぜ、遺体を草むらに放置したままにせず溺死を装ったのか。

腐敗と損傷により、犯行日時や時間を撹乱するため?
殺害現場とその方法を偽装するため?

ちがう。

犯人は、頭がいいわけではない。もっともらしい答えの枠には収まらない思想を持っているだけ。

「きっと、こう考えたんだ。犯人は彼女を“溺愛”していた。狂おしいほどにね。そんな自分と同じように、彼女にも“溺れて”ほしくて、キミは川に投げこんだ。ちがうかな?」

「……ッ」



 
< 152 / 172 >

この作品をシェア

pagetop