ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
――チッ、タッ。
ベッドの上。
部屋の隅に置いている時計の音がやけに気になる。
――チッ、タッ。
よく言えば、研ぎ澄まされた集中力。
悪く言えば、極度の緊張状態。
――チッ、タッ。
3時3分まで、あと2分を切った。
――チッ、タッ。
時間が刻まれるたびに、心臓の鼓動が秒針の音を追い越していく。
――チッ、タッ。
あと1分。
暗い部屋の中で目を閉じると、燃やしたはずの記憶がよみがえる。
心許した友の笑顔、信頼を寄せた刑事。
そして……最愛の人。
――チッ。
思い返せば、初めてだ。鬼として迎える夜は。
――キイィイィーーーーーンッ。
……来た。
鼓膜を揺らす甲高い耳鳴りと、ただならぬ邪気。
……ドコだ!?
磨理子さんの視線を、俺はすでに感じ取っていた。
……ドコだ!?
そろそろ聞こえてもいい頃。
肘から上を床に突っ立て、臀部から上を引きずるあの音が。
――…………。
来ない。
「…………」
やはり、来ない。
「ッ、ハァ……ハァ」
息が詰まるほどの緊迫感が、5分を経過した。
俺は耐えきれずに上体を起こし、ベッドから足をおろす。
「ッ゛!?」
床はフローリングのはず。
だが、動物の毛のような、とてもやわらかい感触がする。
その違和感に、足もとを見た。
と!!
「ぁ゛!!」
股の間から、磨理子さんがじっと見あげている。
床にまるで黒い翼のような、長い髪を広げて。