ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



言葉を聴いてほしいわけじゃない。

感じてほしいこの心、記憶、鼓動。

俺は、永遠に忘れることはない。

この心臓が動いているかぎり、兵藤磨理子という優しい娘がいたこと、伊達磨理子という哀しい女がいたことを。

人生を狂わされた無念や、生きたいと願った情念も、決して忘れたりはしない。

「あの血は、僕たちを新八さんのところに導くためですよね?」

「…………」

「磨理子さん……お父さんは生きてますよ。今、懸命に闘っています。あなたさえよ
ければ、僕がこれから面倒を看ていくつもりです」

「…………」


   ザザザッ――


俺の声は届いていないのか、きつく抱きしめた腕をもろともせず、首筋まで這いあがってくる。

もう、覚悟はできていた。

受け入れる用意は、目を閉じることだけ。


……一つ。

沙奈が気がかりだ。

俺がいなくなっても、心折れずに生きてほしい。


「…………」


ほんのかすかな吐息を頬に感じる。



そして、磨理子さんは言った……。



 
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