ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
『前原ことみ、覚えてるよね? 彼女が今朝、遺体で発見されたらしい』
……えっ!?
『なんで!? 』
宇治木は携帯を持つ手を変えたのか、返事に少しタイムラグがあった。
『それはまだわからない。これから静岡に行ってみるよ!』
遠い日の、彼女の笑顔が、さらに遠ざかる。
『あの子が……死んだ……』
自然と力が抜け、今にも通話終了のボタンを押そうとしたそのとき。
『伝えておきたいことがもうひとつあるんだ』
漏れてきた声に、再び耳を傾ける。
『前に話してくれたよね? 呪いのゲームを終わらせる鍵は“ダルマ”にされた磨理子さんを“買った”人たちの、顧客リストかもしれないって』
『ぇ、ええ』
『やっぱり気になって調べてみたんだ。そしたら……』
宇治木の口調はやけに予告めいている。
『そしたら!? 』
『いたんだよ! 顧客リストを持っていそうな人物が』
伊達重信。
磨理子さんの夫、敏也の父親だと言う。
『なぜ、その人だと?』
『うん。実はね……』
敏也の父親は、彼が中学2年のときに蒸発していた。
にもかかわらず、拘置所の面会記録に名前が記されているというのだ。
『定職にも就かず、酒におぼれて暴力を振るう、どうしようもない人間だったらしいから、単なる金の無心でやって来たのかもしれない。でも、ちょっと気にならないか?』
『ぁ……』
……やばっ。
ふいに視界に入った沙奈は、頬をふくらませてアピールしてくる。
『な、敬太くんはどう思う?』
『えっと宇治木さん……あの、この話はまた日を改めて』
『急にどうした?』
俺は口もとに手のひらを当て、小声で話す。
『実は……沙奈が……今……ここに』
『え!? ……あー、なるほど』
彼は気を遣い、すぐに電話を切った。