ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
やみくもに角を曲がっていくと、大きな通りに出る。
この時間でも店の明かりがチラホラついている、その街の飲み屋街だった。
「ぁ!」
……いた!遠くに、見覚えのある背中が見える。
酒なんて飲んでいないはずなのに杉山さんは千鳥足。
「おーい!」
声が届いていないのか、ある居酒屋の前で止まって看板をじっと眺めている。
「え!?」
まさか、と思う間もなく、店に入っていった。
僕たち未成年者にはまだ縁のない場所だ。
また面倒くさいことになる前にと、あとを追う。
階段を駆けあがり、ボタン付きの扉が開くと、閉店を知らせる看板がドまん中に立てられていた。
節電対策か、店内の照明はところどころ消えている。
「すみません……」
反応がない。
レジ横に呼び出しベルがある。
誰かと一緒なら、ふざけ半分で押せるのだが……。
「すみませーん!」
こんな所で店員を呼ぶのははじめてで、少し声が上ずった。
「はーい」
すると奥の座敷から、右手に布巾、左手に醤油差しを持つ店員の女の子が顔を出す。
「ごめんなさい! 今日はもう閉店で」
「ぁいや、あの、今、若い人が入ってきたと思うんですけど……」
店員は眉間にシワを寄せて首を傾げる。
ちょうどそのタイミングで、トイレから、もうひとりの従業員が出てきた。
「ねえ、ケンくん。今、誰か入ってきたっけ?」
「ぇ? 俺は見てねえよ」
刹那!!
「ぬ゛あああ゛あぁああーーー!!」
店内にこだまする、うなり声。
天変地異でも起こったかと思わせる絶叫に、全員が身をすくめた。