ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



あの遊びは、“子”が“鬼”の手を切って終わりじゃない。

そのあと、今度は“鬼”が追ってきて、逃げた“子”を捕まえにくる。

……ってことは……。

磨理子さんに憑依された沙奈は、『サホは3歩』と言っていた。俺たちのときは『1歩』だ、と。

……そうか!

つまり、俺たちの小指を噛み切った磨理子さんは、消える直前に歩数を指定したんだ。

「クソッ……」

わかった気になっていた。“ただ1つの助かる方法と、終わりの儀式は直結している”と。

でも、そうじゃなかったんだ。

俺の浅はかでまちがった結論付けが、こんな結果を招いてしまった。

くやしさが焦りを駆り立て、アクセルを握る手に力が入る。

これから沙奈と、ふたりの思い出を幾重にも紡いでいくはずだった。

なのに今、経験しているのは、沙奈との2度目の“さよなら”。

やっと恋人になった彼女との関係に、この空と同じような暗雲が立ちこめている。

――キイィーーッ!

【KOJIMA】

この表札の前で急ブレーキ。

玄関のチャイムを鳴らし、待ちきれずにドアを叩く。

「沙奈! いるなら開けてくれ!! 」

すぐに家の中の電気が灯り、今しがた起きたような眠そうな顔をして、沙奈の両親が出てきた。

「キミ……大橋くん!? なぜ、ここに? こんな朝早くにどうしたんだ!?」

「沙奈は!? 帰ってきてませんか? 僕の家から突然いなくなって……いるならお願いです、会わせてください!」

「と、とりあえず、落ち着け!」

全身ずぶ濡れの俺に、父親がタオルを差しだす。

「…………」

拭いている余裕など心のどこにもなく、タオルを手に持ったまま、呆然と立ちつくしていた。

すると、母親が俺の頭にタオルをかぶせ、まるで我が子を扱うように優しく、髪についた水滴を拭いてくれた。

「あら? この首のアザは?」

「え?」

靴箱の横にあった鏡を見ると、顎の下あたりにくっきりとアザがあった。

……沙奈に首を絞められたときのだ。

「ぃいえ、なんでもありません」

「……そう」

両親の前で言えるわけがない。彼女に殺されかけたなんて……。

「沙奈、あなたと離れてから元気がなくてね。ご飯もまともに食べてくれなくて、抜け殻みたいで……たまらず話してしまったの、本当のことを」

母親は、俺の肩口でそう言った。

「そしたら、“彼の家に行く”って、傘も持たず……」

よく学校に持ってきていた沙奈の青い雨傘を見つめる父親。

俺は冷静さを取り戻し、丁寧に問いかける。

「じゃあ……沙奈はまだ、ここには?」

父親は顔をしかめながら首を横に振った。

それから彼女の携帯に何度も電話を掛けたが、すべて電源を切られているという回答。

すぐに父親が決断をした。

「警察に頼むか……」

誰にも異論はなく、母親が通報。



 
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