ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




約15分後、1台のパトカーが家の前に到着し、紺色の雨合羽を着たふたりの警察官が現れた。

両親に事の詳細を聞くと、ひとりがまた車に戻る。

「ところでキミ、その首のアザは?」

「ぇ……これは、ん……っと」

いきなりのことに、言葉に詰まる。

「ちょっといい?」

そんな俺を玄関の外に連れだし、刑事は小声で言った。

「もしや、彼女と派手なケンカでもした?」

「いいえ!」

「沙奈ちゃんだっけ? キミを殺してしまったとカンちがいして逃げてるんじゃないの?」

「ち、ちがいます!」

このタイミングで、もうひとりの警察官が戻ってきた。

「お嬢さん、1ヶ月ほど前に、ご両親から被害届が出されてますね?」

世紀の大発見でもしたかのように息をきらしながら問う。

「はい、たしかに。通り魔に遭って、そのときに」

「なるほど……」

このやり取りが不毛に思えた。

小指を失ったあの日、ケガの理由を求められた俺は、とっさに“通り魔に遭った”と言った。“終わりの儀式”の方法を教えてくれた前原ことみのように。

真実を話せたらどんなに楽か。

だが、それもできない。


 
< 74 / 172 >

この作品をシェア

pagetop