ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
けもの道を進む間、病院で起こったことを赤裸々に話すと、宇治木は質問攻めをピタリとやめた。
人骨を噛み砕く女を想像すれば、誰だって言葉を失うだろう。
「あれだ……」
約10分後。
不思議と身体は覚えていた。新八が身を隠していた山小屋はもうすぐそこ。
俺は引き戸に手をかけ、息を呑み、横へ滑らせる。
「こ、これは⁉」
生活感溢れる内部を見て、宇治木が声を上げて驚く。
目的は中央に位置するソファ。
綿が剥き出しになっているのは、古いという理由だけではなかったらしい。
その綿を手で掻きだすと、スプリングの間に四角い缶が挟まっていた。
「何、それ?」
「……分かりません。でも、これが新八さんの遺言だったので、大事な物であるのは間違いないと思います」
緊張を走らせながら缶の蓋を開けてみると……。
「DVD?」
その数、15枚。
「何だろう……」
盤面には日付とイニシャルが書かれていた。
好奇心をくすぐられたのか、宇治木は乱雑なテーブルの上にあったノートPCの電源を入れる。
「新八さん、お借りします」
ベットに置いた遺灰を一瞥して。
「…………」
起動を待つ間、俺は小屋の中を見渡した。
雨漏りの受け口はいっぱいに水が張り、取り替えられたばかりの裸電球にはホコリが被る。
もう主が戻ることはないのだと感慨にふけていると、
「ん?」
床板の1枚が不自然に浮いているのに気付く。
その場所はたしか、顧客リストを隠していた場所だ。