ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



室内に入ると、あの言葉に信ぴょう性をもたせるための、

「へぇ~すごーい!」

を連発する彼女。

こういうテンションになられると、雰囲気作りが面倒だ。

僕はベッドの端に座ったまま動かず、彩矢香が内装や設備に飽きるのを待ち続けた。

一応、その初々しさに微笑んであげながら。

「このボタン、何?」

「いやそれは押さないほうがいい!」

「何が入ってんの、これ?」

「シャ、シャワー浴びてくるわ」

質問責めに耐え切れず、バスルームへと逃げ込む。

これも作戦のうち。独りになれば、冷静にならざるを得ないから。

思惑通り、タオルを巻いたまま出てきた僕に、彩矢香は目をそらした。

「わ、私も浴びてくる!」

目に余る動揺。これがラブホテルの魔力。

僕はこの機を逃すまいと、あらかじめ仕込んでいた避妊具を、元から置いてあるそれとすり替える。

あとは、コウノトリの首根っこを掴むだけだ。

なんだかソワソワする数分間を経て、バスルームの扉が開き、胸が高鳴る数秒後。

「ッ……」


赤いネイルのしなやかな爪先
恍惚とする美しき細い脚
少し膨らんだ胸をかばう小麦色の肌
艶やかな鎖骨が生み出すくぼみはまるで聖杯


僕の目の前に、女神が現れた。

「見すぎ! 恥ずかしいじゃん……」

彩矢香はそそくさと横に座り、右手でこの目を遮ろうと試みる。

取れそうになったタオルがまた、欲求のギアを上げた。

「服、着てこなかったんだね」

「……だって、こういう所に来てしないってナシじゃないの?」

ほら。


 
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