ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



――カチッ。

宇治木がDVDをドライブに挿しこむと、画面上にメディアプレイヤーの扉が出現。

「何かの映像みたいだね」

特に構えず、再生をクリックすると……。

「っ⁈」
「ッ⁉」

映しだしたのは、狭い一室に置かれたシングルベッドで絡まる男女の身体。

真っ白なシーツの上に、漆黒の長い髪をした四肢の無い女性。男はさらにその上で、汗まみれになりながら激しく腰を振っている。

《『どうだ? あ゛? なんとか言え゛!』》

女性は何度も頬を叩かれたが、人形のように無表情。

まるで、痛みも苦しみも忘れ去った生きる屍。

「う゛っ゛!」

俺は身体の奥底からの激昂を感じ、山小屋を飛びだした。

――ズザザザザッ。

枯れた落ち葉へ滑りこんで膝をつき、大地に胃液をまき散らす。それでもなお、怒りが込みあがる。

「ぅ゛え゛――ッ……グズ」

DVDに収められていたのは、磨理子が性の玩具にされている一部始終。

その映像は、俺なりに貫こうとした正義が、いかに浅はかだったかを報せてくれた。

悲しかっただろう。辛かっただろう。底知れぬ恨みが歪んだ世の中に向けられても仕方がない。

これまで想像に過ぎなかった磨理子の怨念。

視覚から直接的に俺の自我を壊し、より彼女に近づいてゆく。

「っう゛……磨理子さん」

許せない。許せない。許せない。



 
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