ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
許せない。許せない。
あんな仕打ちをしておきながら、今ものうのうと生きている腐った大人が。
「殺してや゛る……」
顧客リストを燃やし、伊達事件を世間から切り離すという決断は大きな間違いだった。
“ようやく”という表現が正しいのかもしれない。
本当にすべきことが、ようやく分かったのだ。
「敬太君?」
心配そうに、宇治木は俺の肩に手を置く。
「キミに見せるモノではなかったね。配慮が足りなくて、本当にすまない」
子供扱いはまっぴらごめんだ。何故ならば、これから俺は、腐った大人に鉄槌を下すのだから。
「宇治木さん。映っていた男に心当たりは?」
「……ある。黒い噂の絶えない政治家だ」
「やっぱり……」
「もう1枚見てみたけど、そっちは現役の野球選手だった」
大方の想像はつく。おそらく夫の敏也が、あらゆる方面への“ゆすり”に使うために隠し撮りしたのだろう。
ならば、正義という形でその意思を継承しようではないか。
「あのDVDは託しますから、然るべき方法に使ってください! 僕は違う形で磨理子さんのことを日本中の人に知ってもらえるよう尽力します」
「尽力って……具体的に何を?」
俺はどっしりと地に足つけて答えた。
「手記を書きます。今日までのすべてを綴った手記を。それでアイツらを殺すんです」
「殺す⁈」
「えぇ、社会から」
確固たる決意。そこに至った理由はもう1つある。
「だから、ふたりの遺骨は宇治木さんが預かっててください。もし出版することができたら、そのお金で僕が墓を建てます! 必ず!!」
「敬太君……」
俺たちはこの日を境にして、伊達事件を白日の下に晒すために動いた。