ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



2015年1月。

俺の書いた手記。俗に云う“暴露本”は、全国の書店に並んだ。

客として関わった著名人の実名公開はさすがにマズいということで、イニシャルでの糾弾に留まったが、センセーショナルな内容に出版社も強気に出て、初版の発行部数は4万部。

得た印税はすべて、新八と磨理子の墓を購入する費用に充てた。

宇治木は証拠映像を駆使し、15名全員を社会的に抹殺していく。

しかし“罪”には問えない。今の法律では裁けない現実があった。

それでも、警察関係者は懲戒免職。
スポーツ選手はひっそりと引退し、大物芸能人は忽然とテレビから消える。

すっかりお尻に火が点いた国家権力の警察。

矢面に立って言及を続ける宇治木に恐れをなし、ある条件を提示した。

ノンキャリアには異例の2階級特進。

「上に昇らなきゃ、結局は何も変わらない」

黙らせるための条件だと宇治木は分かっていたが、でもあえてその辞令に乗ったのだ。

影響は他にもある。俺たち側の一般社会も大混乱。

一部の世論や週刊誌を巻き込み、本に書かれたイニシャルを解明するムーブメントが起きた。

つい最近まで燦々とスポットライトを浴びていた者が次々と鳴りを潜めたのだ。人物の特定は容易と言える。

となれば、“性異常者”のレッテルが貼られ、罵倒の嵐。SNSでも、女性を中心に非難の“荒らし”が続いた。

これで二度と表舞台には戻れないだろう。



 
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