ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



一連のほとぼりが冷める頃、ある人物が俺の実家を訪ねてきた。

玄関のドアを開けたとき、記憶の引き出しを探すのに一瞬のタイムラグ。

相手も、俺の顔を見るなり驚いていた。

「あなた……たしか、火葬場で?」

「……そうだ! あのときの」

俺たちに作法を教えてくれた女性スタッフだ。

新八さんの為に泣いてくれたから、印象に残っていた。

彼女は大貫幸恵と名乗り、ショルダーバッグからあくせくと本を取り出して言う。

「この事件について、もっと詳しく話を訊かせて!」

持っているのは、俺が書いた暴露本。

その表情には鬼気迫るものがあった。これまで取材に訪れた記者とは比べ物にならないほどに。

いつもなら、

『取材はお断りしています』

という常套句で追い返すが、彼女には少なからずの恩義と何か運命的なモノを感じていた。

「分かりました。どうぞ」

家の中へ通し、飲み物を用意した後で、リビングの食卓に向かい合って座る。

「それで、どんな話が訊きたいんですか?」

彼女は“待ってました!”と言わんばかりに、矢継ぎ早な質問攻め。

それはどれも磨理子の生涯に寄り添おうとするものばかり。

メモを一切取らず、食い入る目で俺を見ていた。

やがて話は、磨理子に関わる“きっかけ”となったあの話題へ。

「遊び半分でやる人が出ないように、本では伏せることにしました」

あの、呪われし禁断のゲームだ。

今も携帯に残る掲示板を見せると、瞼をいっぱいに開いてまじまじと眺める。

「これで……本当に伊達磨理子が現れたの⁈」

「えぇ。僕の友人を含め、たくさんの人を呪い殺しました」

すると、間髪入れず。

「復讐? 復讐でしょ⁈」

テーブルに身を乗り出して彼女は言う。俺はその熱さに一瞬たじろいだ。

「は、はい。呪いが広まれば、いつかは伊達事件に関わった者のところにたどりつく。磨理子さんはそう考えていたのかもしれません」

「……すごい。やっぱり彼女は復讐の女神だわ」

「っ⁉」



 
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