ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
だが、危惧していた最悪の事態は、幸いにも俺の思い過ごしに終わった。
ただのイタズラだったようだ。
余談として、この日の出来事は新宿だけに留まらず、都心の至る所で起こっていたそう。
大型ビジョンが設置された街の、そのほとんどで。
原因は、管理会社のシステムへのハッキング。
3時03分から3時33分の間に次々と侵入を成功させたのだから、犯人は相当なハッカーだと宇治木は言う。
そのため、海外のサーバーをいくつも経由していて、捕まえるのは困難だとも。
「さらに分からないのは、犯行の動機だよ」
「……僕は、なんとなく想像がつきます」
ビジョンの映像は携帯電話の動画機能を通しネットに流れ、全国の若者たちが悪ノリして呪いのゲームを実行した。
それにより、“まことしやかに囁かれる都市伝説”から、今や“知る人ぞ知る都市伝説”に変わりつつある。
「ハッキングした犯人も似たようなものです。おそらく、面白がってるだけですよ」
「たしかに、敬太君の言う通りかもしれないね」
なにはともあれ、磨理子はもう誰も呪い殺さない。
仲間を失った夏と似た張りつめた緊張感から解放された俺は、生まれ育った忙しない街を離れ、人里離れた町で穏やかな新しい生活を始めた。
愛する“妻”である、沙奈と共に……。