ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
僕の名前は水嶋辰巳。
名前の由来はたしか、そこそこ有名な弁護士をしている父の干支が辰年で、元々は助手だった母が1つ年下だから。
上にふたり姉がいて、男は僕だけ。両方とも、父の背中を追いかけ弁護士になった。
現在、自分から言うとアクが出て、人から言われるとハクがつく、そんな一流大学の4年生。
この冬、僕も司法試験に合格し、卒業を控えている状態だ。
2017年12月15日。
住みたい街といわれるアーケードの一角にある古洒落れた居酒屋。
その店先で、僕は人を待っている。
店員が用意した電光ボードにはこう書かれていた。
【開桜中学校3年1組 同窓会 本日貸切】
字を見て、共同幹事の橋口亮平は言う。
「お世辞にもキレイとは言えねえな!」
「あぁ、たしかに」
亮平は僕の幼なじみ。小学から高校までずっと一緒の仲。
「おぉーお! タツミにリョウ、ひさしぶり」
最初に声を掛けてきたのは、尾堂直哉。
「よう!」
風貌は金髪にピアス、真冬なのに胸元を開けて高価なネックチェーンを見せつけている。
開桜は都内トップの私立中学。
そして、3年1組は一流高校への進学が有力視されていた“特進クラス”。
要するに、こいつは明らかな転落組。
「学生……じゃなさそうだな」
「今、何やってんの?」
「俺? ま、強いて言うなら最先端のビジネスかな!」
「最先端のビジネス?」
そこから先は企業秘密らしい。
ま、どうでもいい。
「寒いから、とりあえず入れよ」
「おう。お前らは?」
「ヤスがもうすぐ着くらしいから」
「……ヤス? あ~ぁ、あいつか」
直哉は鼻で笑いながら、大股開きの我が物顔で店に入っていく。