ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
そのすぐ後、上村康文が上下ジャージ姿でやって来た。
「遅くなってごめん!」
「よ! 待ってたぜ、金メダル候補」
「やめろよ~」
彼は中学から陸上部に所属し、今や長距離界の期待の新星。東京オリンピックの強化指定選手に選ばれるほどだ。
「サインの練習してきたか?」
「す、するわけないだろ!」
まんざらでもない顔をする康文を連れて店に入ると、獲物を見つけた肉食系女子が僕たちを囲む。
「もーう、遅いよ!」
真っ先に亮平の腕を掴むのは梅田はるか。
彼女は“高学歴グラビアアイドル”として売り出し中の身で、親がテレビ局のプロデューサーをしている亮平は、いわゆる“最高のカモ”。
「早く早く!」
湯之下美佐子は馴れなれしく僕の手を取る。
今は飲食業をしているらしいが、派手な身なりから想像するに、おそらくキャバクラ嬢だろう。
「そろそろ乾杯しようって言ってたの」
佐藤茜はヤスの後ろに回って背中を押す。
今は……。
「アカネってたしか、声優だっけ?」
「うん、そうだよ」
らしい。
自然に当時のグループで寄り固まる3年1組。
「ねぇね~、飲み物何にするぅ?」
同窓会も、二十歳を越えれば出会いの場。
僕らにさりげなく胸を当ててくる女子たちを、直哉は怪訝な顔で見て見ないフリ。
昔は、真っ先に笑いを取り、率先して皆を引っ張っていた直哉が一番モテていた。
将来性がないとバッサリ切り捨てるのだから、女は恐ろしい。